以前の記事「mod p における乗法群を時計のように並べる」を踏まえた内容です。
この記事から読んでも分かるように書いたつもりですが、
分かりにくい箇所があれば参照して下さい。
nを2以上の整数とします。
mod n の集合 {0,1,2,……,n-1} は、加法(足し算のことです)に関して巡回群になっています。
巡回群は時計のような円状の配置にできます。
mod 12 の場合の加法巡回群は、
0
11 1
10 2
9 12 3
8 4
7 5
6
という、見慣れた時計の形に配置できます。
1を足すと、時計回りに1個分動きます。
0に足し続けることで全ての数が現れる数を、加法群の生成元と呼びます。
mod 12 の加法巡回群の生成元の集合は{1,5,7,11}です。
mod n の加法巡回群の生成元の集合は、乗法(掛け算のことです)に関して群になります。
全てのmod n で乗法群が巡回群になるとは限らず、
pを奇素数、mを正の整数とするとき、
乗法に関して巡回群になるのはnが 2,4,p^m,2p^m の場合です。
mod 11 の加法巡回群{0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10}の生成元の集合は{1,2,3,4,5,6,7,8,9,10}で、0以外の要素全てです。
11は素数なので乗法群は巡回群になり、時計のように配置できます。
1
6 2
3 4
7 11 8
9 5
10
2を掛けると時計回りに1個分動き、6を掛けると反時計回りに1個分動きます。
1に掛け続けることで全ての数が現れる数を、乗法群の生成元と呼びます。
mod 11 の乗法巡回群の生成元の集合は{2,6,7,8}です。
加法巡回群の生成元の集合が乗法群になったように、
乗法巡回群の生成元の集合は、べき算に関しての演算で群になります。
演算〔a〕を
a^x〔a〕a^y=a^(xy)
と定義します。
aを mod n の乗法巡回群の任意の生成元とすれば、
mod n の乗法巡回群の生成元の集合は、演算〔a〕に関して群になります。
例として、
mod 11 の乗法巡回群の生成元の集合{2,6,7,8}
が演算〔2〕に関して群になることを見ます。
mod 11では 2^10=2^0 なので、指数は mod 10 になっています。
生成元の集合 {2,6,7,8} は {2^1,2^9,2^7,2^3} なので、
指数が10と互いに素な数の集合 {1,9,7,3} になっています。
nと互いに素な数は mod n で加法群の生成元になるので、
nと互いに素な数の集合は mod n の乗法群になります。
指数が mod 10 の乗法群となるので、
集合{2,6,7,8}は、演算〔2〕に関して群になります。
mod 11 の演算〔2〕の群を時計のように配置すると、
2
7 8
6
となります。
3乗すると時計回りに1個分動き、7乗すると反時計回りに1個分動きます。
成り立ちからも分かるように、mod 10 の乗法群と同型です。
一般に、mod p の〔a〕の群は、mod p-1 の乗法群と同型になります。
掛け算の時計で「向かい合う数の和」が0になったように、
〔a〕の時計で、「向かい合う数の積」は1になります。
mod 11 の演算〔2〕の群の向かい合う数の積を見ても、
2×6=12=1 (mod 11)
7×8=56=1 (mod 11)
と、1になっています。
掛け算は指数の足し算ととれます。 例:2^3×2^4=2^(3+4)
加法巡回群の生成元の集合から乗法群を作ったように、
掛け算を指数の加法ととることで、
乗法巡回群の生成元の集合から、
指数の乗法である〔a〕の群を作った、と解釈できます。
演算〔a〕は mod n だけでなく通常の実数でも考えられます。
aを任意の正の数とするとき、
正の数の集合は、通常の掛け算×を加法、演算〔a〕を乗法とする体になります。
任意の正の数は a^z(zは実数) の形で表せるので、
指数を見れば実数の体と同型になるからです。
また、演算〔a〕を加法ととらえ、演算〔a〕よりもう一つ上のクラスの乗法を考えることも可能です。
分かりにくい所などあればコメント貰えると嬉しいです。
以上です。お読みいただきありがとうございました!