明るい夜のまばたき

数が降る街

数学で考えたことを書いています

等比級数を mod p で考える

等比級数とは等比数列の無限和のことで、

mod p とは p で割った余りが同じ数同士を同一視するということです。

 

1+1/2+1/2^2+1/2^3+…… =2

という等式を、mod  5 で考えてみます。

1+1/2+1/2^2+1/2^3+…… =2 (mod 5)・・・☆

 

2×3=6=1 (mod 5) なので、1=2×3 を2で割ると 1/2=3 (mod 5) が分かります。1/2=3 を☆に代入すると

1+3+3^2+3^3+…… =2 (mod 5)

という式が得られます。

mod 5 で 1+3+3^2+3^3+…… が2に等しいとは直感的に思えませんが、2に対しての特徴があったのでそのことについて書きます。

 

1+3+3^2+3^3+……  (mod 5)

を有限項までの和で止めたときに、2と等しくなることはありません。

1=1  (mod 5)

1+3=4  (mod 5)

1+3+3^2=3 (mod 5)

1+3+3^2+3^3=0 (mod 5)

となり、3^4=1 (mod 5) なので a=b (mod 4) ならば 3^a=3^b (mod 5) であることから、

この後も1,4,3,0,1,4,3,0,……と繰り返すからです。

mod 5 における整数{0,1,2,3,4}の内、2だけが有限和で現れません。

 

また、有限項までの和で止めたときの値の平均をとると2になります。

1,4,3,0,1,4,3,0,……と繰り返すので、1,4,3,0の平均をとると

(1+4+3+0)/4=8/4=2 (mod 5)

と、確かに2です。

 

有限和で2にならない、有限和の平均が2になる、という二つの性質から、無限和が2であることが自然なように感じました。

 

この二つの性質は一般の場合にも成り立っています。

 

pを奇素数、nをn≠0,1(mod p)を満たす正の整数とします。

等比級数の公式より、

1+1/n+1/n^2+1/n^3+…… =n/(n-1)

 です。これをmod p で考えます。

 1+1/n+1/n^2+1/n^3+…… =n/(n-1)  (mod p)

 

sを任意の正の整数とするとき、

 1+1/n+1/n^2+1/n^3+…… (mod p) のs項までの有限和、

1+1/n+1/n^2+1/n^3+……+1/n^(s-1) (mod p)

は n/(n-1) と等しくなりません。

 1+1/n+1/n^2+1/n^3+……+1/n^(s-1)

=(n^s-1)/( (n-1)n^(s-1) )

=n^s/( (n-1)n^(s-1) ) - 1/( (n-1)n^(s-1) )

=n/(n-1)-1/( (n-1)n^(s-1) )

となり 1/( (n-1)n^(s-1) )  ≠0 (mod p) なので、s項までの有限和は n/(n-1) になりません。

 

また、n^s ≠ n^t (mod p) ならば、

n/(n-1)-1/( (n-1)n^(s-1)) ≠ n/(n-1)-1/( (n-1)n^(t-1)) (mod p)

なので、

s,tがnの位数より小さく s≠t であれば、

s項までの有限和とt項までの有限和は等しくなりません。

なのでnがpの原始根のときは、

mod pにおける整数の内n/(n-1)と等しくないもの全てが有限和に現れます。

(nの位数とは n^r=1(mod p) となるような最小の正の整数rのことです。

また mod p において位数が(p-1)になる数をpの原始根と言います。)

 

では次に有限和の平均が n/(n-1) になることを示します。

mod p における0でない整数の位数は (p-1) の約数なので(フェルマーの小定理から示せます)、

(p-1)項目までの有限和の平均をとればいいです。

s項までの有限和が n/(n-1)-1/( (n-1)n^(s-1) ) だったので、

(p-1)項目までの有限和を足し合わせたものは、

n/(n-1)-1/( (n-1)n^(1-1) )

+n/(n-1)-1/( (n-1)n^(2-1) )

+n/(n-1)-1/( (n-1)n^(3-1) )

+…………

+n/(n-1)-1/( (n-1)n^(p-1-1) ) (mod p)

だと分かります。

 

これを整理すると

(p-1)×n/(n-1)-(1+1/n+1/n^2+……+1/n^(p-2))×1/(n-1)

=(p-1)×n/(n-1)  (mod p)

となります。

フェルマーの小定理 n^(p-1)-1=0 (mod p) の両辺を (n-1)n^(p-2) で割った、

1+1/n+1/n^2+……+1/n^(p-2)=0 を代入しました。)

 

平均をとりたいので、この(p-1)個の有限和を足し合わせたものを(p-1)で割ると

(p-1)×n/(n-1)×1/(p-1)=n/(n-1) (mod p)

となり、平均がn/(n-1)になることが示せました。

 

 

等比級数を mod p で考えたとき、

無限和の値が有限和に現れず(nがpの原始根なら無限和の値のみが現れず)、有限和の平均が無限和の値になることを綺麗だなと感じます。

以上です。お読みいただきありがとうございました!