明るい夜のまばたき

数が降る街

数学で考えたことを書いています

べき算の時計

以前の記事「mod p における乗法群を時計のように並べる」を踏まえた内容です。

この記事から読んでも分かるように書いたつもりですが、

分かりにくい箇所があれば参照して下さい。

mizumiya-umi.hatenablog.com

 

 

 

nを2以上の整数とします。

mod n の集合 {0,1,2,……,n-1} は、加法(足し算のことです)に関して巡回群になっています。

巡回群は時計のような円状の配置にできます。

mod 12 の場合の加法巡回群は、

      0
   11     1
 10             2
9         12        3
 8            4
   7    5
       6

という、見慣れた時計の形に配置できます。

1を足すと、時計回りに1個分動きます。

 

0に足し続けることで全ての数が現れる数を、加法群の生成元と呼びます。

mod 12 の加法巡回群の生成元の集合は{1,5,7,11}です。

mod n の加法巡回群の生成元の集合は、乗法(掛け算のことです)に関して群になります。

全てのmod n で乗法群が巡回群になるとは限らず、

pを奇素数、mを正の整数とするとき、

乗法に関して巡回群になるのはnが 2,4,p^m,2p^m の場合です。

mod 11 の加法巡回群{0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10}の生成元の集合は{1,2,3,4,5,6,7,8,9,10}で、0以外の要素全てです。

11は素数なので乗法群は巡回群になり、時計のように配置できます。

           1
      6        2
    3            4
  7      11      8
    9           5
          10

2を掛けると時計回りに1個分動き、6を掛けると反時計回りに1個分動きます。

1に掛け続けることで全ての数が現れる数を、乗法群の生成元と呼びます。

mod 11 の乗法巡回群の生成元の集合は{2,6,7,8}です。

 

加法巡回群の生成元の集合が乗法群になったように、

乗法巡回群の生成元の集合は、べき算に関しての演算で群になります。

演算〔a〕を

a^x〔a〕a^y=a^(xy)

と定義します。

aを mod n の乗法巡回群の任意の生成元とすれば、

mod n の乗法巡回群の生成元の集合は、演算〔a〕に関して群になります。

 

 

例として、

mod 11 の乗法巡回群の生成元の集合{2,6,7,8}

が演算〔2〕に関して群になることを見ます。

mod 11では 2^10=2^0 なので、指数は mod 10 になっています。

生成元の集合 {2,6,7,8} は {2^1,2^9,2^7,2^3} なので、

指数が10と互いに素な数の集合 {1,9,7,3} になっています。

nと互いに素な数は mod n で加法群の生成元になるので、

nと互いに素な数の集合は mod n の乗法群になります。

指数が mod 10 の乗法群となるので、

集合{2,6,7,8}は、演算〔2〕に関して群になります。

mod 11 の演算〔2〕の群を時計のように配置すると、

     2

7       8

     6

となります。

3乗すると時計回りに1個分動き、7乗すると反時計回りに1個分動きます。

成り立ちからも分かるように、mod 10 の乗法群と同型です。

一般に、mod p の〔a〕の群は、mod p-1 の乗法群と同型になります。

 

掛け算の時計で「向かい合う数の和」が0になったように、

〔a〕の時計で、「向かい合う数の積」は1になります。

mod 11 の演算〔2〕の群の向かい合う数の積を見ても、

2×6=12=1 (mod 11)

7×8=56=1 (mod 11)

と、1になっています。

 

掛け算は指数の足し算ととれます。 例:2^3×2^4=2^(3+4) 

加法巡回群の生成元の集合から乗法群を作ったように、

掛け算を指数の加法ととることで、

乗法巡回群の生成元の集合から、

指数の乗法である〔a〕の群を作った、と解釈できます。

 

演算〔a〕は mod n だけでなく通常の実数でも考えられます。

aを任意の正の数とするとき、

正の数の集合は、通常の掛け算×を加法、演算〔a〕を乗法とする体になります。

任意の正の数は a^z(zは実数) の形で表せるので、

指数を見れば実数の体と同型になるからです。

 

 

また、演算〔a〕を加法ととらえ、演算〔a〕よりもう一つ上のクラスの乗法を考えることも可能です。

 

分かりにくい所などあればコメント貰えると嬉しいです。

以上です。お読みいただきありがとうございました!