以前の記事『位数がべき乗の乗法巡回群』で書いた巡回群が、体になることに気付きました。
「位数がべき乗の乗法巡回群」で書いた予想は、
mod p^n (pは奇素数、nは正の整数)において、pm+1(mは整数)の形で表せる数の集合は、掛け算に関して位数p^(n-1)の巡回群になるだろう
また、 p^2×k+1(kは整数)の形で表せない数が生成元になるだろう
というものでした。
mod p^2 の場合では、
A=pa+1,B=pb+1とすると、
A×B=(pa+1)(pb+1)=p^2(ab)+p(a+b)+1=p(a+b)+1 (mod p^2)
となり、a,b に注目すれば足し算になっているので、
mod p の{0,1,2,……,p-1} の足し算の群と同型になり、巡回群だと分かります。
演算◎を
(pa+1)◎(pb+1)=pab+1
と定義すると、
mod p^2 におけるpm+1(mは整数)の形で表せる数の集合は
通常の掛け算×を加法、◎を乗法とする体になります。
証明します。
体であることを証明するには、
①加法に関して可換群であること
②乗法に関して加法の単位元を除けば可換群であること
③分配法則が成立していること
を示せば良いです。
①は、×に関して巡回群になることを先ほど証明したので、示せています。
②を示します。
加法の単位元 1=p×0+1 を除いた pj+1 の形で表せる数の集合での、
(pa+1)◎(pb+1)=pab+1 という演算◎は、
a,bに注目すると、 mod p での 0 を除いた整数についての掛け算と同じです。
mod p で 0 を除いた整数は掛け算に関して可換群なので、②が示せました。
③を示します。
A=pa+1,B=pb+1,C=pc+1 とするとき
A◎(B×C)=(A◎B)×(A◎C) (mod p^2)
を示せば、分配法則が示せます。
(◎に関して可換だと分かっているので、順番を変えた(B×C)◎A=(B◎A)×(C◎A)も成立するかを確かめる必要はありません。)
A◎(B×C)=(pa+1)◎(pb+1)(pc+1)
=(pa+1)◎(p(b+c)+1)
=pa(b+c)+1
=p(ab+ac)+1
=(pab+1)×(pac+1)
=( (pa+1)◎(pb+1) )×( (pa+1)◎(pc+1) )
=(A◎B)×(A◎C) (mod p^2)
なので、分配法則が成立し③が示せ、体だと証明できました。
mod p^2 では×と◎で体になりましたが、
mod p^n (nは3以上の整数)のときは、 ×と◎では体になりません。
◎はmod p^(n-1)における整数の掛け算と同型で、
mod p^h(hは2以上の整数)において 0 を除く整数の集合は、掛け算に関して群にならないからです。
(pと互いに素な整数の集合であれば、群になります。)
mod p^2 に限った体ではありますが、
通常の掛け算×を加法とする体が存在することが面白いなと思いました。
以上です。お読みいただきありがとうございました!