明るい夜のまばたき

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数学で考えたことを書いています

位数が素数の乗法巡回群の体

以前の記事『位数がべき乗の乗法巡回群』で書いた巡回群が、体になることに気付きました。

mizumiya-umi.hatenablog.com

 

「位数がべき乗の乗法巡回群」で書いた予想は、

mod p^n (pは奇素数、nは正の整数)において、pm+1(mは整数)の形で表せる数の集合は、掛け算に関して位数p^(n-1)の巡回群になるだろう

また、 p^2×k+1(kは整数)の形で表せない数が生成元になるだろう

というものでした。

 

mod p^2 の場合では、

A=pa+1,B=pb+1とすると、

A×B=(pa+1)(pb+1)=p^2(ab)+p(a+b)+1=p(a+b)+1 (mod p^2)

となり、a,b に注目すれば足し算になっているので、

mod p の{0,1,2,……,p-1} の足し算の群と同型になり、巡回群だと分かります。

 

演算◎を

(pa+1)◎(pb+1)=pab+1

と定義すると、

mod p^2 におけるpm+1(mは整数)の形で表せる数の集合は

通常の掛け算×を加法、◎を乗法とする体になります。

加法×の単位元は1、乗法◎の単位元はp+1です。

 

証明します。

体であることを証明するには、

①加法に関して可換群であること

②乗法に関して加法の単位元を除けば可換群であること

③分配法則が成立していること

を示せば良いです。

 

①は、×に関して巡回群になることを先ほど証明したので、示せています。

 

②を示します。

加法の単位元 1=p×0+1 を除いた pj+1 の形で表せる数の集合での、

(pa+1)◎(pb+1)=pab+1 という演算◎は、

a,bに注目すると、 mod p での 0 を除いた整数についての掛け算と同じです。

mod p で 0 を除いた整数は掛け算に関して可換群なので、②が示せました。

 

③を示します。

A=pa+1,B=pb+1,C=pc+1 とするとき

A◎(B×C)=(A◎B)×(A◎C) (mod p^2)

を示せば、分配法則が示せます。

(◎に関して可換だと分かっているので、順番を変えた(B×C)◎A=(B◎A)×(C◎A)も成立するかを確かめる必要はありません。)

A◎(B×C)=(pa+1)◎(pb+1)(pc+1)

=(pa+1)◎(p(b+c)+1)

pa(b+c)+1

=p(ab+ac)+1

=(pab+1)×(pac+1)

=( (pa+1)◎(pb+1) )×( (pa+1)◎(pc+1) )

=(A◎B)×(A◎C) (mod p^2)

なので、分配法則が成立し③が示せ、体だと証明できました。

 

mod p^2 では×と◎で体になりましたが、

mod p^n (nは3以上の整数)のときは、 ×と◎では体になりません。

◎はmod p^(n-1)における整数の掛け算と同型で、

mod p^h(hは2以上の整数)において 0 を除く整数の集合は、掛け算に関して群にならないからです。

(pと互いに素な整数の集合であれば、群になります。)

 

 

mod p^2 に限った体ではありますが、

通常の掛け算×を加法とする体が存在することが面白いなと思いました。

以上です。お読みいただきありがとうございました!