明るい夜のまばたき

数が降る街

数学で考えたことを書いています

カタラン数が2nCn-2nCn-1で表せることの拡張

n番目のカタラン数 f[n] は、f[n]=2nCn-2nC(n-1) と書けます。

カタラン数の数列の母関数をF(x)とします。

つまり、

F(x)=f[0]+f[1]x+f[2]x^2+f[3]x^3+……

ということです。

カタラン数の性質より、F(x)は F(x)=1+xF(x)^2 を満たします。

そのことを一般化して、

g[n]=(kn)Cn+(1-k)×(kn)C(n-1) の数列の母関数G(x)が、

G(x)=1+xG(x)^k を満たすこと

に気付きました。

 

具体例として k=3 のときを見ます。

g[n]=3nCn-2×3nC(n-1)

なので

g[0],g[1],g[2],g[3],g[4],……

0C0-2×0C(-1) , 3C1-2×3C0 , 6C2-2×6C1 , 9C3-2×9C2 , 12C4-2×12C3 ,……

です。計算すると

1,1,3,12,55,……

なので、

母関数G(x)=1+1x+3x^2+12x^3+55x^4+……

です。

G(x)^3=1+3x+12x^2+55x^3+……

なので、

確かに G(x)=1+xG(x)^3 を満たしそうです。

 

 

 

もう少し一般化した、

G(x)=1+xG(x)^k とするとき

(kn+a)Cn+(1-k)×(kn+a)C(n-1) の数列の母関数が、

G(x)^(a+1) になること

を証明します。

 

a=-1 のとき つまり、

(kn-1)Cn+(1-k)×(kn-1)C(n-1) の数列の母関数が G(x)^0=1 に等しいこと

さえ示せば、

パスカルの三角形やカタラン数での母関数の関係』で証明した

(kn+b)Cn の数列の母関数にG(x)^w を掛けると (kn+b+w)Cn の母関数になること

を使うことで、証明が終わります。

mizumiya-umi.hatenablog.com

 

(kn-1)Cn+(1-k)×(kn-1)C(n-1) が n=0 のとき1、nが正の整数のとき0だと示せば、母関数が 1=G(x)^0 だと分かります。

n=0 のとき

(kn-1)C0+(1-k)×(kn-1)C(n-1)

=(-1)C0+(1-k)×(-1)C(-1)

=1  ※aC0=1, aC(-1)=0 なので

 

nが正の整数のとき

(kn-1)Cn+(1-k)×(kn-1)C(n-1)

=(kn-1)Pn×1/n!+(1-k)×(kn-1)P(n-1)×1/(n-1)!

=( (kn-1)Pn+n(1-k)×(kn-1)P(n-1) )×1/n!

 ※1/n!を外に出した

=0×1/n!

 ※(kn-1)Pn=(kn-n)×(kn-1)P(n-1) なので

=0

 

よって

(kn-1)Cn+(1-k)×(kn-1)C(n-1) の母関数が G(x)^0=1 に等しい

と示せたので

(kn+a)Cn+(1-k)×(kn+a)C(n-1) の母関数が G(x)^(a+1) になること

が証明できました。

 

ちなみに、

(kn+a)Cn-(k-1)×(kn+a)C(n-1)=(kn+a)Cn×(a+1)/(a+1+kn-n)

 ※ただしa+1+kn-n≠0

なので

(kn+a)Cn×(a+1)/(a+1+kn-n) の数列の母関数も G(x)^(a+1) になります。

 

 

 

 

 

 

m行目の母関数が d(x)^m (d(x)はxについての多項式) になるような、

一般化したパスカルの三角形でも同様のことが言えます。

s次多項式 d(x) のr次の係数を {r} と書くことにします。

つまり

d(x)={0}+{1}x+{2}x^2+……+{s}x^s

ということです。

また、

d(x)^u の x^v の係数を uDv と書くことにします。

 ※(1+x)^u の x^v の係数が uCv と書けることに、対応した表記にしました。

{r}=1Dr です。

 

 

e[n]={0}×nkDn+(1-k){1}×nkD(n-1)+(1-2k){2}×nkD(n-2)+……+(1-sk){s}×nkD(n-s)

の数列の母関数E(x)は、

E(x)=d(xE(x)^k)

つまり

E(x)={0}+{1}(xE(x)^k)+{2}(xE(x)^k)^2+……+{s}(xE(x)^k)^s

になることに気付きました。

{0}={1}=1,{r}=0 (rは2以上の整数) とすると、前半に証明した命題と同じになります。

 

前半のパスカルの三角形の時と同様、もう少し一般化して

{0}×(nk+a)Dn+(1-k){1}×(nk+a)D(n-1)+……+(1-sk){s}×(nk+a)D(n-s)

の数列の母関数が

E(x)^(a+1)になること

を証明します。

 

パスカルの三角形やカタラン数での母関数の関係 その2』の内容を踏まえれば

(nk+b)Dn の数列の母関数にE(x)^w を掛けると (nk+b+w)Dn の母関数になること

が分かるので、

a=-1 のときを示せば十分です。

なので

{0}×(nk-1)Dn+(1-k){1}×(nk-1)D(n-1)+……+(1-sk){s}×(nk-1)D(n-s)

の数列の母関数が E(x)^0=1 になることを示します。

mizumiya-umi.hatenablog.com

 

d(x)^nk=d(x)×d(x)^(nk-1)

の n次の係数を対応させると

nkDn={0}×(nk-1)Dn+{1}×(nk-1)D(n-1)+{2}×(nk-1)D(n-2)+……+{s}×(nk-1)D(n-s)

だと分かるので

{0}×(nk-1)Dn+(1-k){1}×(nk-1)D(n-1)+……+(1-sk){s}×(nk-1)D(n-s)

=nkDn-k×{1}×(nk-1)D(n-1)-2k×{2}×(nk-1)D(n-2)-……-sk×{s}×(nk-1)D(n-s)

です。

 

n=0 のときに1、nが正の整数のときに0になると示せば、

母関数が 1=E(x)^0 だと分かります。

 

n=0 のとき

nkDn-k×{1}×(nk-1)D(n-1)-2k×{2}×(nk-1)D(n-2)-……-sk×{s}×(nk-1)D(n-s)

=0D0-k×{1}×(-1)D(-1)-2k×{2}×(-1)D(-2)-……-sk×{s}×(-1)D(-s)

=0D0 ※aDb=0 (bは負の整数) なので

=1  ※aD0={0}^a なので

 

 

nが正の整数のとき

nkDn-k×{1}×(nk-1)D(n-1)-2k×{2}×(nk-1)D(n-2)-……-sk×{s}×(nk-1)D(n-s)=0

を証明するには、移項した

nkDn=k×{1}×(nk-1)D(n-1)+2k×{2}×(nk-1)D(n-2)+……+sk×{s}×(nk-1)D(n-s)

を示せばいいです。以下、この式を☆で表します。

 

〈0〉,〈1〉,〈2〉,〈3〉,……,〈n〉 を0以上の整数とし、

〈0〉+〈1〉+〈2〉+〈3〉+……+〈n〉=nk

1×〈1〉+2×〈2〉+3×〈3〉+……+n×〈n〉=n

を満たすとします。

{0}^〈0〉×{1}^〈1〉×{2}^〈2〉×……×{n}^〈n〉 の係数が☆の両辺で等しいと示せば、

☆が真だと分かります。

 

☆の左辺 nkDn の {0}^〈0〉×{1}^〈1〉×{2}^〈2〉×……×{n}^〈n〉 の係数は、

多項定理より

(nk)!/〈0〉!〈1〉!〈2〉!……〈n〉!

です。

 

zを0以上n以下の整数とすると

zk×{z}×(nk-1)D(n-z) の

{0}^〈0〉×{1}^〈1〉×{2}^〈2〉×……×{n}^〈n〉の係数は

z×〈z〉k×(nk-1)!/〈0〉!〈1〉!〈2〉!……〈n〉!

です。

〈z〉=0 のときは係数も0になり、

〈z〉が正の整数のときは、

(nk-1)D(n-z)=〈z〉×(nk-1)!/〈0〉!〈1〉!〈2〉!……〈n〉!

になるからです。

 

 

よって、☆の右辺の {0}^〈0〉×{1}^〈1〉×{2}^〈2〉×……×{n}^〈n〉の係数は、

(1×〈1〉+2×〈2〉+…+n×〈n〉)k×(nk-1)!/〈0〉!〈1〉!〈2〉!……〈n〉!

=nk×(nk-1)!/〈0〉!〈1〉!〈2〉!……〈n〉!

 ※1×〈1〉+2×〈2〉+…+n×〈n〉=n なので

(nk)!/〈0〉!〈1〉!〈2〉!……〈n〉!

 ※nk×(nk-1)!=(nk)! なので

 

よって、☆の両辺の係数が等しいと分かり、☆が真だと証明できました。

なので、

{0}×(nk-1)Dn+(1-k){1}×(nk-1)D(n-1)+……+(1-sk){s}×(nk-1)D(n-s)

の数列の母関数が E(x)^0=1 だと分かり、

{0}×(nk+a)Dn+(1-k){1}×(nk+a)D(n-1)+……+(1-sk){s}×(nk+a)D(n-s)

の数列の母関数が

E(x)^(a+1)になること

が証明できました。

 

後半の証明が大変で、思いつくまで時間かかりましたが楽しかったです。

以上です。お読みいただきありがとうございました!

 

 

 

【追記】

e[n]=(nk+1)Dn /(nk+1) でもある事に気付きました。

e[n]={0}×nkDn+(1-k){1}×nkD(n-1)+(1-2k){2}×nkD(n-2)+……+(1-sk){s}×nkD(n-s)

よりもシンプルで良いです。

 

(nk+1)Dn /(nk+1)={0}×nkDn+(1-k){1}×nkD(n-1)+(1-2k){2}×nkD(n-2)+……+(1-sk){s}×nkD(n-s) ・・・($)

を証明します。

 

{0}×nkDn+{1}×nkD(n-1)+{2}×nkD(n-2)+……+{s}×nkD(n-s)=(nk+1)Dn

なので、($)の右辺は

(nk+1)Dn-k( {1}×nkD(n-1)+2{2}×nkD(n-2)+……+s{s}×nkD(n-s) )

です。

($)の両辺を移項して整理すると

n/(nk+1) × (nk+1)Dn= {1}×nkD(n-1)+2{2}×nkD(n-2)+……+s{s}×nkD(n-s) ・・・@

となります。

〔0〕,〔1〕, …… ,〔n〕を

〔0〕+〔1〕+……+〔n〕=nk+1

0×〔0〕+1×〔1〕+……+n×〔n〕=n

を満たすとします。

{0}^〔0〕×{1}^〔1〕×{2}^〔2〕×……×{n}^〔n〕 の係数が@の両辺で等しいと示せば、

@が真だと分かります。

 

※ (nk+1)Dnはd(x)^(nk+1) の x^n の係数なので、

{0},{1},……,{n}の次数の和(〔0〕+〔1〕+……+〔n〕)は(nk+1) でなければならず、

{0},{1},……,{n}の次数にxの次数を掛けた数の和(0×〔0〕+1×〔1〕+……+n×〔n〕)は、nでなければなりません。

 

@の左辺 n/(nk+1) × (nk+1)Dn の{0}^〔0〕×{1}^〔1〕×{2}^〔2〕×……×{n}^〔n〕 の係数は、

多項定理より

n/(nk+1) ×(nk+1)!/〔0〕!〔1〕!〔2〕!……〔n〕!

n×(nk)!/〔0〕!〔1〕!〔2〕!……〔n〕!

です。

 

@の右辺の{0}^〔0〕×{1}^〔1〕×{2}^〔2〕×……×{n}^〔n〕 の係数は、

(1×〔1〕+2×〔2〕+……+n×〔n〕)×(nk)!/〔0〕!〔1〕!〔2〕!……〔n〕!

n×(nk)!/〔0〕!〔1〕!〔2〕!……〔n〕!

です。

 

よって@の両辺が等しいと示せたので、

(nk+1)Dn /(nk+1)={0}×nkDn+(1-k){1}×nkD(n-1)+(1-2k){2}×nkD(n-2)+……+(1-sk){s}×nkD(n-s) が示せ、

e[n]=(nk+1)Dn /(nk+1) が証明できました。