パスカルの三角形を左詰めにした
0行目 1
1行目 1,1
2行目 1,2,1
3行目 1,3,3,1
4行目 1,4,6,4,1
5行目 1,5,10,10,5,1
……
を考えます。
1行目の母関数1+xをF(x)とすると、
k行目の母関数はF(x)^kになります。
例えば、k=3とすると、
F(x)^3=(1+x)^3=1+3x+3x^2+x^3
となり、係数が1,3,3,1で、3行目の母関数になります。
左からm+1番目をm列目と呼ぶことにし、
n行m列目の数を[n,m]と書くと
[n,m]=[n-1,m]+[n-1,m-1]
になっています。
[0,0]=[-1,0]+[-1,-1]
と思うと分かりやすいです。
F(x)=1+F(x)^0×x
になっています。
パスカルの三角形の、[n,m](n行m列目の数)を[n-m,m]の場所へ移動させた図は、
0行目 1,1,1,1,1,1,…
1行目 1,2,3,4,5,6,…
2行目 1,3,6,10,15,21,…
3行目 1,4,10,20,35,56…
4行目 1,5,15,35,70,126…
……
となります。
0行目の母関数のk乗が、k-1行目の母関数になっています。
パスカルの三角形をずらした事を踏まえると、
n行m列目の数を[n,m]と書くとき
[n,m]=[n-1,m]+[n,m-1]
となっています。
つまり、[0,0]=[-1,0]+[0,-1]です。
0行目の母関数、
1+x+x^2+x^3+x^4+……
をE(x)とすると、
E(x)=1+E(x)^1×x
となっています。
パスカルの三角形の、[n,m]を[n-2m,m]の場所へ移動させた図は、
0行目 1,2, 6, 20, 70…
1行目 1,3,10,35,126…
2行目 1,4,15,56,210…
3行目 1,5,21,84,330…
……
となります。
パスカルの三角形をずらした事を踏まえると、
この図のn行m列目の数を[n,m]と書くとき
[n,m]=[n-1,m]+[n+1,m-1]
となっています。
つまり、[0,0]=[-1,0]+[1,-1]です。
このことから、この図のn行目の母関数を〈n〉とすると、
〈n〉=[n,0]+[n,1]x+[n,2]x^2+……
=([n-1,0]+[n+1,-1])+([n-1,1]+[n+1,0])x+([n-1,2]+[n+1,1])x^2+……
=[n-1,0]+[n-1,1]x+[n-1,2]x^2+……
+[n+1,-1]+[n+1,0]x+[n+1,1]x^2+……
なので、
〈n〉=〈n-1〉+〈n+1〉x ・・・①
だと分かります。
〈n〉×K(x)^a=〈n+a〉
となる関数K(x)があるとすると、
①の左辺=〈n〉=〈n-1〉×K(x)
①の右辺=〈n-1〉+〈n+1〉×x=〈n-1〉+〈n-1〉×K(x)^2×x
なので、両辺を〈n-1〉で割れば
K(x)=1+K(x)^2×x
となります。
これを満たすK(x)は、カタラン数の母関数です。
a行目の母関数がK(x)^aになるような図は、
〈n〉と同じく、[n,m]=[n-1,m]+[n+1,m-1]を満たします。
K(x)^0 1,0,0, 0, 0…
K(x)^1 1,1,2, 5,14…
K(x)^2 1,2,5,14,42…
K(x)^3 1,3,9,28,90…
……
一般に、
パスカルの三角形の[n,m]を[n-jm,m]へ移動させた図
つまり、
[n,m]=[n-1,m]+[n-1+j,m-1]
となるようにパスカルの三角形をずらした図を考え、
その図のn行目の母関数を〈n〉と書くとき
〈n〉×L(x)^a=〈n+a〉
となるようなL(x)は
L(x)=1+L(x)^j×x
を満たします。
証明します。
〈n〉=〈n-1〉+〈n-1+j〉x ・・・②
なので、
②の左辺=〈n〉=〈n-1〉×L(x)
②の右辺=〈n-1〉+〈n-1+j〉×x=〈n-1〉+〈n-1〉×L(x)^j×x
です。②の両辺を〈n-1〉で割ると、
L(x)=1+L(x)^j×x
となり、証明できました。
a行目の母関数がL(x)^aになる図を考えてみます。
0行目の母関数が L(x)^0=1 なので[0,0]=1, [0,r]=0(rは正の整数)
1行目の母関数が L(x)^1=1+L(x)^j×x
j 行目の母関数が L(x)^j なので
[1,m]=[0,m]+[j,m-1] だと分かります。
同様に、
n行目の母関数が L(x)^n=L(x)^(n-1)+L(x)^(n-1+j)×x なので
[n,m]=[n-1,m]+[n-1+j,m-1]を満たします。
つまり、
L(x)^aの図は、〈n〉と同じく、[n,m]=[n-1,m]+[n-1+j,m-1]を満たすことが分かりました。
j=0のときはL(x)=1+xで、パスカルの三角形の1行目の母関数になり、
j=1のときはL(x)=1+x+x^2+……で、パスカルの三角形の右端をとった母関数になり、
j=2のときはL(x)=1+L(x)^2×xで、カタラン数の母関数になります。
パスカルの三角形における母関数たちの関係が一つにまとまったようで、楽しいです。
一般化したパスカルの三角形でも同じようなことが言えるので、次の記事でそのことについて書きたいです。
お読みいただきありがとうございました。