すうじあむというサイトに投稿していた内容を、整理したものです。
タイトルの掛け算時計は、以前の記事『mod p における乗法群を時計のように並べる』で書いた時計のことです。
掛け算時計は複素平面に対応づけられ、規則的に数を敷き詰められることに気付きました。
mod 5 を例に考えます。
…-6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6…
という、数直線の整数だけ書いたものを mod 5 で考えると
…4 0 1 2 3 4 0 1 2 3 4 0 1…
となります。
原点の0を太字で0と表記していますが、mod 5の数直線でどの0を原点としても矛盾はないです。
mod 5 の2,3は「2乗すると-1になる」という虚数i,-iと同じ性質を持っています。
2^2=4=-1 (mod 5)
3^2=9=-1 (mod 5)
なので、2(mod 5)をi、3(mod 5)を-iと同一視できます。
(3をi、2を-iと同一視しても構いません)
iと2(mod 5)を同一視したので、
複素平面でのガウス整数(実部と虚部が整数の複素数)の集合をmod 5 で考えたいなら、
右方向へ1進むと+1、上方向へ1進むと+2すれば良さそうです。
そのルールに従うと、
401234012340
234012340123
012340123401
340123401234
123401234012
このような並びになります。
省略しましたが、上下左右どこまでも続きます。
mod 5 の掛け算時計は
1
2 5 3
4
このようなものでした。この時計を時計回りに90度回転し、5を0に置き換えると
2
4 0 1
3
となり
mod 5での複素平面の原点の周りと、掛け算時計が一致します。
複素平面上の数を×iすると、原点中心に反時計回り90度回転した数になるのと同様、
mod 5での複素平面の数を×2しても、原点中心に反時計回り90度回転した数になります。
(数直線のときと同様、どの0を原点としても良いです)
以前の記事で、複素平面上で原点以外の点を中心に回転できることを書きました。
実は、mod 5での複素平面でも、原点以外を中心に回転できます。
任意の数を×2して-1を足すと、任意の1(mod 5)を中心に反時計回り90度回転した数になります。
3
012
4
という原点の隣の部分を見ると
2×2-1=3
3×2-1=0
0×2-1=4
4×2-1=2
と、確かに×2-1すると反時計回りに循環しています。
一般のmod pでの複素平面において
×aして+bするとnを中心に回転するなら、
a,b,n には
n(a-1)+b=0 (mod p)
という関係があるようです。
平面を敷き詰められる正多角形には、正方形の他に、正三角形、正六角形があります。
なので、
正六角形の形をしたmod 7 の掛け算時計でも、数を敷き詰めることができます。
mod 7の掛け算時計は
1
5 3
7
4 2
6
このようなものです。
3,5(mod 7)が3乗して-1(mod 7)になるので、3乗して-1になる複素数と同一視し、
複素平面上での同じ位置に配置します。
右方向へ1進むときに+1(mod 7)、
右上方向へ1進むときに+3(mod 7) することで
0123456012
45601234560
23456012345
60123456012
4560123456
という敷き詰めができました。
mod 5やmod 7でなくとも
2乗や3乗をすると-1になる数があれば、このような敷き詰めが作れます。
例えば、mod 13の場合
5^2=25=-1(mod 13) なので
右方向へ1進むと+1、上方向へ1進むと+5、とすれば
mod 5と同様な配置の敷き詰めが作れます。
また、4^3=64=-1(mod 13)なので
右方向へ1進むと+1、右上方向へ1進むと+4、とすると
mod 7と同様な配置の敷き詰めも作れます。
敷き詰められると気付いたとき、だいぶテンションが上がったのを覚えています。
敷き詰めの中で足し算と掛け算のつじつまが合っているのがすごいなぁと思います。
以上です。お読みいただきありがとうございました!