前回の記事『パスカルの三角形を筒状に丸める』の続きです
この記事では前回の後半に書いた
「筒状に丸めたパスカルの三角形において、n+1行目のq個の数の2乗和は2n+1行目の中央の数になる」
という予想の、一般化したものを証明します。
(前回の内容を踏まえているので、前回を読んだほうが分かりやすい記事になっています。)
どんな一般化かというと
f(x)を係数が左右対称なxの多項式(回文多項式と言うそうです)として、
予想の「パスカルの三角形」の部分を、 「k+1行目にf(x)^kの係数を並べた三角形」にしたものです。
まず最初に、筒状に丸めていない場合を証明します。
f(x)^n=[0]+[1]x+[2]x^2+……+[t]x^t
というように、f(x)^nをt次式とし、x^sの係数を[s]とします。
(f(x)^nを式の形にするため、t や [ ] を適当に置きました)
回文多項式同士の積は回文多項式になるので、回文多項式f(x)をn回掛けたf(x)^nも回文多項式になります。
なので、 [s]=[t-s] となっています。
2n+1行目はf(x)^2nの係数を並べたものなので
2n+1行目の中央の数は f(x)^2n=(f(x)^n)^2 のx^tの係数です。
f(x)^n=[0]+[1]x+[2]x^2+……+[t]x^t
なので
f(x)^2nのx^tの係数=[0]×[t]+[1]×[t-1]+[2]×[t-2]+……+[t]×[0]
です。f(x)^nが回文多項式であることから
[0]=[t],[1]=[t-1],[2]=[t-2],[3]=[t-3],……
なので
f(x)^2nのx^tの係数=[0]^2+[1]^2+[2]^2+……+[t]^2
となり、2n+1行目の中央の数が n+1行目の数の2乗和になることを証明できました。
では筒状に丸めた場合を証明します。
前回の記事と同様に、
k+1行目に f(x)^k の係数を並べた三角形の、
「左からm番目の数が左端の数と同じ場所に来るとき」の丸め方を「q=m-1のとき」と書くことにします。
q=m-1のときとはつまり、x^(m-1)=1として f(x) をm-2次以下の式にしたときの係数を取り出したものです。
また、この記事では
筒状に丸めた f(x)^k を f〔x〕^k、
筒状に丸める前の f(x)^k をそのまま f(x)^k と、区別して書くことにします。
t<q と q≦t で場合分けします。(tはf(x)^n の次数です)
t<qのとき
f(x)^n が元々 q-1 次以下の式なので、
f(x)^n と f〔x〕^n の係数は同じになり、
f〔x〕^n の係数の2乗和は f(x)^2n のx^tの係数と等しくなります。
f(x)^2n は2t次の式で、
t+q次以上の係数が0なので、x^q=1であってもx^tの係数は影響を受けず、
f〔x〕^2nとf(x)^2nのx^tの係数は等しくなり、f〔x〕^n の係数の2乗和とも等しくなることが分かります。
よって、t<qのときは成立すると示せました。
では、q≦t のときを考えます。
x^q=1なので、
f〔x〕^2nの中央の数は、f(x)^2nの…t-2q,t-q,t,t+q,t+2q…次の係数の和になります。
また、f(x)^2nが回文多項式で、t-s次とt+s次の係数が等しいことを考えると、
f〔x〕^2nの中央の数は、f(x)^2nの …t-3q,t-2q,t-q次の係数の和の2倍に、t次の係数を足したものになります。
f(x)^2n=(f(x)^n)^2=([0]+[1]x+[2]x^2+……+[t]x^t)^2
なので、f(x)^2nのs次の係数は
[0][s]+[1][s-1]+[2][s-2]+……+[s][0]
と等しいです。
【s】=[s]+[s+q]+[s+2q]+[s+3q]+……
とおくと、
f〔x〕^n =【0】+【1】x+【2】x^2+……+【q-1】x^(q-1)
となり、f〔x〕^n の係数の2乗和は
【0】^2+【1】^2+【2】^2+……+【q-1】^2
=([0]^2+[1]^2+[2]^2+……+[t]^2) + 2(<0>+<1>+<2>+……+<q-1>)
となります。
(<s>は [s],[s+q],[s+2q],[s+3q],…… から異なるもの2つを選んで掛けたものの総和です。つまり、
<s>=([s][s+q]+[s][s+2q]+[s][s+3q]+…) + ([s+q][s+2q]+[s+q][s+3q]+…) + ([s+2q][s+3q]+[s+2q][s+4q]+…) + ……
ということです。)
筒状に丸めていない場合で見たように、 [0]^2+[1]^2+[2]^2+……+[t]^2 は f(x)^2n のt次の係数と等しくなるので、
<0>+<1>+<2>+……+<q-1> が f(x)^2n の…t-3q,t-2q,t-q次の係数の和と等しいことを示せば、証明できます。
f(x)^2n の t-uq次の係数は
[0][t-uq]+[1][t-uq-1]+[2][t-uq-2]+……+[t-uq][0]
ですが、 [s]=[t-s]なので
[0][uq]+[1][uq+1]+[2][uq+2]+……+[t-uq][t]
となります。
0≦a<b≦t, aとbの差をuqとすると、
[a][b]は [0][uq],[1][uq+1],[2][uq+2],……,[t-uq][t] に含まれています。
なので f(x)^2n の …t-3q,t-2q,t-q次の係数の和は、
差がq,2q,3q,…となるようなaとbの、すべての[a][b]の和と等しくなります。
よって <0>+<1>+<2>+……+<q-1> が f(x)^2n の …t-3q,t-2q,t-q次の係数の和と等しいことが示せ、証明が終わりました。
もっとシンプルな証明がありそうにも思いますが、証明できてよかったです。
お読みいただきありがとうございました!