この記事は『すうじあむ』というサイトに投稿していた内容を整理したものです。すうじあむ自体現在見れなくなっていて、復活するのかも分からないのでこちらに置いておきます。
pを素数とするとき、mod p において0でない数の集合{1,2,……,p-1}は掛け算に関して巡回群になります。
これを時計のように円周上に並べます。
1
3 5 2
4
↑の図はmod 5 の場合で、{1,2,3,4}のどれに2を掛けても時計回りに1つ分移動し、どれに3を掛けても反時計回りに1つ分移動します。
4を掛けると時計回りに2つ分移動し、1を掛けると移動せずそのままです。
12
11 1
10 2
9 3
8 4
7 5
6
↑のような通常の時計はnを足すと時計回りにnつ分移動しますが、
mod p における0以外の数の集合は、足し算ではなく掛け算で時計のように回ります。
掛け算の時計は、足し算の時計にない性質があります。
向かいあう数を足すと0になります。
mod 5 で言うと、
1の向かいは4で 1+4=5=0
2の向かいは3で 2+3=5=0 となっています。
このことはフェルマーの小定理で証明できます。
「a≠0 (mod p) ならば a^(p−1) = 1 (mod p) である」というものでした。
aを(p-1)乗して初めて1になる数とします。
(mod 5 における2,3のような、掛け算の時計で1の隣に置ける数のことです。)
a^(p-1)=1 (mod p) を式変形すると
( a^( (p-1)/2 )-1 ) ( a^( (p-1)/2 )+1 ) =0 (mod p)
と書けます。
aは(p-1)乗して初めて1になるので、 a^( (p-1) /2 )-1 ≠ 0 (mod p) です。
なので a^( (p-1)/2 ) +1 =0 (mod p)
つまり a^( (p-1)/2 ) =-1 (mod p) が分かります。
mod p の0でない数nにaを (p-1)/2 回掛けると、
時計回りに(p-1)/2 つ分移動し、nと向かい合う数になるので、
a^( (p-1)/2) =-1 からnの向かい合う数が-nだと分かり、
向かい合う数の和が0だと証明できました。
「向かい合う数の和が0」を一般化して、n角形状にある数の和が0になることも示せます。
1
5 3
7
4 2
6
↑はmod 7 での掛け算の時計です。
三角形状に足すと0になります。具体的には、 1+2+4=0、3+6+5=0 (mod 7) です。
なぜなら、
a^(p−1) =1 (mod p) をp=7で考えた a^6=1 (mod 7) を式変形すると
(a^2-1)(a^4+a^2+1)=0 (mod 7) となり、
aが6乗して初めて1になる数ならば 1+a^2+a^4=0 (mod 7)と分かるからです。
同様にmod 11 で五角形状にある数の和が0になることや、一般のmod p でn角形状にある数の和が0になることを示せます。
この掛け算の時計から派生した内容はいくつか考えていて、個人的にも気に入っているものがあるので、いずれまた数が降る街に投稿していく予定です。
以上です。お読みいただきありがとうございました!