パスカルの三角形の1行目にどのような数をいくつ配置しても、
「隣り合う数の和を下に置く」ことさえ守れば成立する性質を見つけました。
それは
「n行目のそれぞれの数に、n+1行目にある右斜め下の数を掛けて、和をとったもの」と
「n行目のそれぞれの数に、n+1行目にある左斜め下の数を掛けて、和をとったもの」
の値が同じになるという性質です。
例として、-2と1を1行目に置いたパスカルの三角形(この記事では〈-2,1〉三角形と呼ぶことにする)を考えます。
-2 1
1行目の-2と1に2行目にある右斜め下の数を掛けて和をとると
(-2)×(-1)+1×1=3 で、
1行目の-2と1に2行目にある左斜め下の数を掛けて和をとると
(-2)×(-2)+1×(-1)=3 と一致します。
2行目の-2と-1と1に3行目にある右斜め下の数を掛けて和をとると
(-2)×(-3)+(-1)×0+1×1=7 で、
2行目の-2と-1と1に3行目にある左斜め下の数を掛けて和をとると
(-2)×(-2)+(-1)×(-3)+1×0=7 と一致します。
3行目の-2と-3と0と1に4行目にある右斜め下の数を掛けて和をとると
(-2)×(-5)+(-3)×(-3)+0×1+1×1=20 で、
3行目の-2と-3と0と1に4行目にある左斜め下の数を掛けて和をとると
(-2)×(-2)+(-3)×(-5)+0×(-3)+1×1=20 と一致します。
証明します。
n行目に左から順に
a[1],a[2],……,a[k]
というk個の数が並んでいるとします。
このとき、n+1行目には左から順に
a[1] ,a[1]+a[2] ,a[2]+a[3] ,……,a[k-1]+a[k] ,a[k]
というk+1個の数が並びます。
ここで、n行目のそれぞれの数にn+1行目にある右斜め下の数を掛けて和をとると
a[1](a[1]+a[2]) +a[2](a[2]+a[3]) +……+a[k-1](a[k-1]+a[k]) +a[k]a[k]
=(a[1]^2+a[2]^2+……+a[k]^2) + (a[1]a[2]+a[2]a[3]+……+a[k-1]a[k])
n行目のそれぞれの数にn+1行目にある左斜め下の数を掛けて和をとると
a[1]a[1]+a[2](a[1]+a[2])+a[3](a[2]+a[3])+……+a[k](a[k-1]+a[k])
=(a[1]^2+a[2]^2+……+a[k]^2) + (a[1]a[2]+a[2]a[3]+……+a[k-1]a[k])
と同じ値になったので、真であると示せました。
また、「n行目のそれぞれの数にn+2行目にある真下の数を掛けて和をとったもの」は
「n行目のそれぞれの数にn+1行目の右斜め下の数を掛けて和をとったもの」の2倍になります。
〈-2,1〉三角形でみると、
1行目の-2と1に、3行目にある真下の数を掛けて和をとると、
(-2)×(-3)+1×0=6
2行目の-2と-1と1に、4行目にある真下の数を掛けて和をとると、
(-2)×(-5)+(-1)×(-3)+1=14
と、確かに「右斜め下の数を掛けて和をとったもの」の2倍になっています。
証明を書きます。
n行目に左から順にa[1],a[2],……,a[k]
というk個の数が並んでいるとします
このとき、n+1行目には左から順に
a[1] ,a[1]+a[2] ,a[2]+a[3],……,a[k-1]+a[k] ,a[k]
というk+1個の数が並び、
n+2行目には左から順に
a[1] ,2a[1]+a[2] ,a[1]+2a[2]+a[3] ,a[2]+2a[3]+a[4],…
…,a[k-2]+2a[k-1]+a[k] ,a[k-1]+2a[k] ,a[k]
というk+2個の数が並びます。
n行目のそれぞれの数に、n+2行目にある真下の数を掛けて和をとると、
a[1](2a[1]+a[2])+a[2](a[1]+2a[2]+a[3])+a{3}(a[2]+2a[3]+a[4])+…
…+a[k-1](a[k-2]+2a[k-1]+a[k])+a[k](a[k-1]+2a[k])
=2(a[1]^2+a[2]^2+……+a[k]^2) + 2(a[1]a[2]+a[2]a[3]+……+a[k-1]a[k])
となって
「n行目のそれぞれの数にn+1行目にある右斜め下の数を掛けて和をとったもの」の2倍になることが分かり、証明できました
ちなみに、一番最初に書いた性質は一般化できるようです
「n行目のそれぞれの数に、n+m行目の右斜め下の数を掛けて、和をとったもの」と
「n行目のそれぞれの数に、n+m行目の左斜め下の数を掛けて、和をとったもの」
の値が同じになるようです。
〈-2,1〉三角形で、m=2の場合を見てみましょう。
1行目の-2と1に3行目の右斜め下の数を掛けて和をとると
(-2)×0+1×1=1で、
1行目の-2と1に3行目の左斜め下の数を掛けて和をとると
(-2)×(-2)+1×(-3)=1と一致します。
2行目の-2と-1と1に4行目の右斜め下の数を掛けて和をとると
(-2)×(-3)+(-1)×1+1×1=6で、
2行目の-2と-1と1に4行目の左斜め下の数を掛けて和をとると
(-2)×(-2)+(-1)×(-5)+1×(-3)=6と一致します。
また、「隣り合う3つの数の和を下に置く」というルールに変えたパスカルの三角形において、1行目にどのような数をいくつ配置しても、
「n行目のそれぞれの数に、n+m行目の右斜め下の数を掛けて、和をとったもの」と
「n行目のそれぞれの数に、n+m行目の左斜め下の数を掛けて、和をとったもの」
の値が同じになる性質は成り立つようです。
一般化した「隣り合うx個の数の和を下に置く」というルールのパスカルの三角形でもこれらのことが成立していたら楽しいな、と思います
以上です お読みいただきありがとうございました!